人は誰しも長寿を切望する。この人間に比較して、寿命の長い大樹・巨木の生命力には、昔からひとは驚嘆し、そこに神秘性を感じていた。
万葉の時代の自然崇拝の中で、巨木だけが特別に扱われていたということはなかったが、歌の中で、「神さぶ」と詠むことに、その祈りの原点がみられる。おそらく、太い幹の根元に巻いた注連飾りやその樹木の近くに建てられた祠を目にしたとき、巨樹の木霊の神々しさを感じたであろうことが推察される。
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何時の間も 神さぶけるか 香具山の 茂岡に 神さぶ立ちて 栄えたる 神なびの 三諸の山に 斎（いわ）う杉 舟木伐る 能登の島山 今日みれば |
鴨足人 紀鹿人 詠みびと知らず 大伴家持 |
四街道の古木巡りの後、息子と共に、千葉県の天然記念物を見て回ったことがあり、その時に出会った房総の巨樹を回想して、歌巡りをここにしてみたい。（
英舟：房総巨樹の木霊）
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＃１ |
佐倉城の夫婦モッコク 三百を 越えて春秋 数えれば |
佐倉市城内町
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| ＃２ |
千葉寺ノ公孫樹 千葉寺の 歴史を語る 大公孫樹 |
千葉市千葉寺
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| ＃３ |
千本イチョウ 御婦人の 柏手を打つ 音冴えて |
市川市八幡 葛飾八幡宮
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| ＃４ |
飯香岡八幡宮の夫婦銀杏 子無くとも 仲良きことに 変わりなし |
市原市八幡１０５７
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| ＃５ |
東源寺の榧ノ木 榧の木に 老楽をみる 枝八方 |
我孫子市柴崎
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| ＃６ |
神崎の大クス 朽ちかけて 元木に生えし ひこばえに |
神崎町 神崎神社
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| ＃７ |
神崎のオハツキイチョウ 墓参りの ついでと云いつ 銀杏を |
神崎町神崎本宿
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| ＃８ |
環ノ大樟 室をなす 根方を台座に 三本の |
富津市東大和田 興源時 |
| ＃９ |
竹岡のオハツキイチョヨウ 薬王寺の 水子地蔵に 舞い降りる |
富津市竹岡 薬王寺
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| ＃１０ |
鹿野山の大桑 神野寺の 裏庭に生う 大桑は |
君津市鹿野山 神野寺
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| ＃１１ |
根本家の椎 土地に馴染み 季を重ねて みる今は |
木更津市 根本邸
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| ＃１２ |
公津の大杉 麻原に 和久巣日の神 おわす頃 |
成田市台方寺 麻賀多神社
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| ＃１３ |
府馬の大クス 千年の 齢と聞けば さもあらん |
山田町府馬 宇賀神社
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| ＃１４ |
天寧寺の柏槙 天焦がす 火炎のごとき 柏槙の |
鋸南町下佐久間 天寧寺
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| ＃１５ |
岩井の蘇鉄 アロエ咲く 房総冬の 暖かさ |
富山町竹の内 綱代邸 |
| ＃１６ |
沼の柏槙 長寿なる 沼の柏槙 八百年 |
館山市沼
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| ＃１７ |
上三原ノ大樟 近在の 人々もうでる 山神社 |
和田町上三原 山神社
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| ＃１８ |
清澄の大スギ 雄々しやな 清澄寺に生う 千年杉 |
天津小湊町 清澄寺
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| ＃１９ |
天津のまるばちしゃの木 黒潮に 乗りて天津に 根づきしか |
天津小湊町 神明神社
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| ＃２０ |
賀恵淵の椎 幾度か 副木を替えて 精気得る |
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| ＃２１ |
松虫寺の公孫樹 松虫の 姫に所縁の 杖公孫樹 |
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| ＃２２ |
飯積の大杉 ひっそりと 酒々井の里の 飯積に |
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| ＃２３ |
関の羅漢槙 隠居せる 郷士といえる 姿にて |
白子町関 雨宮邸
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| ＃２４ |
上野村の大椎 ひと枝は 倒れしままに 朽ち果てて |
勝浦市名木 寂光寺
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| ＃２５ |
高照寺の公孫樹 天を突く 怒髪のごとき 枝裁き |
勝浦市勝浦 高照寺
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| ＃２６ |
長福寺ノ槙 片田舎に 千年生きる 槙の木の |
大原町下布施 長福寺
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| ＃２７ |
三島ノ白樫 根は裂けて 傾く枝の 苔生せば |
君津市豊英 渡辺邸
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| ＃２８ |
大山のバクチノキ それとみれば すぐに目に付く バクチノキ |
鴨川市古畑 悉地院
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| ＃２９ |
福星寺館のしだれ桜 たとえれば シテの能面 孫三郎 |
四街道市 福星寺
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