立山の花　尋ねびと

明けやらぬ　街の通りを　ひた走る
　　　二つ目ライトの　淡き光束

高速道の　路肩に止めし　トラックの
　　　朝を待ちいる　異様な静けさ

靄しばし　陽の赤々と　染まりきて
　　　ゴッホ好みの　諏訪湖朝焼け

高速道を　乗り継ぎ出でし　豊科は
　　　絵葉書山並み　夏を装う

ドライブの　道の端に見る　草花は
　　　安曇野包む　素朴な風景

階段に　高所営巣の　岩燕
　　　共存共栄　くろよんのダム

堰きとめし　黒部のダムの　偉大さは
　　　懸かりし虹を　目の下に観る

人造湖は　活きていますか　健やかに
　　　かさぶたまがいの　岸の荒れ肌

岩肌に　生きいる証　ここにあり
　　　ほたるぶくろの　花を見つけて

　　　岩に着く　ほたるぶくろの　活きどころ

遊覧の　船の立てたる　横波に
　　　蠢いている　流木の群れ

涸沢の　わずかばかりの　土塊に
　　　花咲かせたる　花の命は

岩えぐり　黒部ケーブル　通さんは
　　　山のパノラマ　自然崇拝

後立山を　黒部湖上に　仰ぎみて
　　　大観峰の　掌中に立つ

　　　ありがたや　一目御山の　残り雪

御山深く　穿たれし中　進みゆけば
　　　室堂平の　残雪まぶし

黒百合の　たった一つを　撮らんかも
　　　入るを拒まる　禁断の園

　　　黒百合を　遠くに撮りて　縁結ぶ

花あれば　この雪渓に　映えたらん
　　　こばいけいそう　みくりが池塘

名を聞けば　子供好みの　兎菊
　　　小岩のかげに　愛し顔あり

　　　手を振って　呼んでくれたる　兎菊

雪に耐えて　短き夏の　風ごころ
　　　小岩鏡の　艶姿みる

長かりき　冬の辛さを　語るべく
　　　ガレ場に匂う　這松の叢

　　　這松の　冬の姿や　そのままに

風に似合う　江戸紫の　スカーフは
　　　夏の麗人　白山千鳥

　　　こだわりし　江戸紫の　小道かな

疲れ癒すと　路傍の石に　寄り添えば
　　　白山ぼうふう　お話し相手

期待せし　深山の花や　稚児車
　　　在るべきところに　ありてうれしき

　　　夏山の　思い出つなぐ　稚児車

山道を　そぞろ歩きつ　花問えば
　　　交す挨拶　花言葉まで

池の端の　残雪いまだ　解けざるは
　　　立山の夏　人恋うる頃

残雪の　夏を誇りて　映したる　
　　　みくりが池の　山崎カール

　　　御山映す　みくりが池の　雪変化

収穫は　お花畑に　行けしこと
　　　談合坂の　夕餉の話題