箱根ドライブ行

家族みな　集える時は　またあるや
　　　箱根山荘に　初春を祝ぐ

芦ノ湖の　霧深まれば　朝まだき
　　　ヘッドライトの　光り乱舞す

カラカラと　滑車の音の　始まりて
　　　桃源台より　人湧き出ずる

自ずから　手を合わせたき　心地なり
　　　大観山から見る　初春の富士

雲間より　陽の差しくれば　山際の
　　　新雪映えて　富士を言祝ぐ

仙石原の　湿性花園に　余所目みる
　　　ニッコウキスゲは　身だしなみよき

雨上がりの　芦ノ湖畔の　ドライブは
　　　霧隠れせる　富士を求めて

芦ノ湖に　霧の晴れるを　待ちわびて
　　　ベールの富士に　ピント合わせる

箱根路の　旅人なぐさむ　百合の花
　　　富士のお宿の　箱入り娘

箱根路の　杉の並木の　合間より
　　　泰然として　富士は迎えり

ドライブに　名だたる峠の　小休止
　　　薄野の風　富士の背景

山路模す　花園のあまた　草いきれ
　　　いつか来た道　ふりかえる今

その昔　ありふれていた　山野草
　　　今は花園の　輿入れ娘

岩場棲む　コマクサの花に　巡り合う
　　　幾つ世代を　継ぎてきしこと

花好きの　ひとの群れいる　園にいて
　　　選びそびれし　株のあわれを

箱根路の　ガラスの森の　佇まい
　　　ふたり憩えば　不如帰の声

ヴェネチアの　ガラスの光りの　中にいて
　　　熱き炎の　生業をみる

箱根湿性花園