遊山三昧

　遊山とは、はなはだ古風なようだが、今風のドライブがてらの小旅行をこう言いたい。
　辞典によれば、遊山とは、遊楽のために外出することとあり、その昔、物見遊山の際に利用していた物見車、すなわち牛車が現在の自家用車に代わっているにすぎないと思うからである。
　もっとも、牛車には御者がついていて、「のほほん、のほほん」だが、ドライブでは、自分で運転する精神的な負担はあるが。
　いろいろな遊山の歌で栞を作ってみたい。（英舟：遊山三昧）

今様の　ドライブの旅
やすやすと　行き着く時も
人はみな　刻に忙しく
物見しが　観れども見えず
そこに来た　証しを求む
山路さえ　歩くことなく
山頂に　立ちし思いは
ときめきの　ありと言うも
汗にのみ　知れる心地す
いまさらに　時代を超えて
古の　旅に学べば
歌枕　何をか問わん
百代の　過客を夢見
昔人の　旅路辿れば
絵心は　旅のよすがに
思い出は　記念の写真
人生が　旅であるなら

楽しくてあれ　ドライブの旅

車窓より　雲の美学を　悟りたる
　　　タナーのヴエネチア　ミレーの晩鐘

ガラス戸を　ひとり占めんと　蟷螂は
　　　この一徹を　我と競いし

騒がしき　世の中なれど　われ妻に
　　　言われしほどの　極楽蜻蛉よ