日光滝見行

酔狂な　御滝巡りの　ドライブに
　　　日光寄らず　結構と洒落て

滝の音は　谷の底より　こだまして
　　　霧降茶屋へ　所在伝える

女峰山は　雪化粧して　おわします
　　　霧降茶屋の　われもお見合い

山陰の　暗く淀めば　谷底に
　　　板穴川へ　滝の素麺

冬枯れし　ブナの林を　透かしみれば
　　　二段に及ぶ　白き流跡

　冬枯れて　岩の水垢離　透かしみる

杉の根の　張り出る小徑　踏み越えて
　　　寂光の滝の　音に惹かれる

滝に打たる　弘法大師の　徳を得て
　　　清き流れの　谷川となる

苔生せば　石段悲し　下照の
　　　姫の泣くがや　寂光の滝

えぐられて　岩間を落つる　水簾
　　　裏見の滝を　表より観る

滝壷に　水の飛沫の　舞い踊る
　　　光りの奇に　虹の立つみゆ

あれうれし　飛沫に濡れて　地蔵さん
　　　裏からひとり　滝をみており

　ただひとり　悦に入れたり　地蔵尊

落葉松の　林の奥は　冬枯れて
　　　谷の小道に　落ち葉散り敷く

冬枯れの　谷のお洒落の　耳飾り
　　　くましでの穂の　風に揺られて

登り来て　明智平の　眺望に
　　　御山のお臍は　放蕩の留

男の山の　大薙ぎの跡　痛ましや
　　　水を集めて　方等の滝

雲井つく　裂け目を落つる　滝の音
　　　声かき消さん　神の御声か

観瀑台の　眺めや如何に　十二滝
　　　霧立ち上る　天地の中

集塊岩の　袖に打ち振る　滝の音の
　　　厳かにして　神を宿せる

塩焼きの　鮎を食べつつ　相席の
　　　外人客と　滝の音聞く

枯れ枝に　氷柱を作り　流れ行く
　　　竜頭の滝の　冬の始まり

流れ下る　滝の飛沫は　活けるごと
　　　中禅寺湖へ　嬉々として消ゆ

　白龍の　野に下りたる　すごさかな

　竜神の　涙かしらん　初氷

湯の湖より　溢れるばかり　落し水
　　　末広がりの　扇をなせる

　岩肌を　隠し切れざる　扇かな

熊笹は　雪の重みを　残しつつ
　　　湯川の流れに　身を任せおる