春の庭

居住まいを　整い済みて　薮椿の
　　　花の終わりに　お礼肥やる

くつろげば　八十八夜の　茶の香り
　　　庭の花木も　慈雨の一時

山茶花の　生け垣に沿う　山吹の
　　　人待ち顔に　咲くをみるとき

野趣を好く　庭に造れば　山採りの
　　　うつぎの若葉の　自在に芽吹く

野に埋もる　花を惜しみて　我が庭へ
　　　移植の今は　後楽を待つ

新しく　住処を得たる　海老根草
　　　群れて咲き居る　庭の一隅

貰われて　さ庭に植えらる　ローズマリー
　　　ハーブの香り　異邦人かな

母衣掲げて　健気に咲ける　一輪の
　　　熊谷草の　山野借景

野にあれば　乱れ咲きいる　卯の花も
　　　庭木の整枝に　烏帽子の飾り

風に折れて　鉢に萎れる　サフィニアの
　　　命の限りは　生け花に活く

水仙の　球根あまた　貰い受け
　　　来春を待つ　鉢の数ほど

林間の　住まいを恋えば　山法師
　　　濡れ縁に寄る　木立の影絵

少々は　延び広がるや　鞍馬苔
　　　庭の新地を　覆うものかは

移植されて　ようよう活きる　薮椿
　　　ひとり後れて　咲く花をみる

請われては　庭に居住まう　浜梨の
　　　花の散り敷く　風の戯れ

花終えて　木陰に憩う　海老根草
　　　子宝を得て　夏の眠りに